この青空に約束を― 卒寮おめでとう!
移転第一弾のレビューエントリーは「この青空に約束を―」です。
いろいろあって時間がたってしまいましたが、グランドフィナーレを迎えました。
「卒寮、おめでとうっ!」
何というか、まさにこの一言ですね。
すべてのシナリオの集大成たるシナリオとしてよくできていたと思います。
それぞれがつぐみ寮での生活を振り返り、仲間との主人公との絆を感じ
さみしい悲しいながらもとても満足のできる別れを迎えることができる。
流す涙は「悲しさ」でもあり「うれしさ」でもあり。
そんなわけで、そのグランドフィナーレについて、
ヒロインたちがそれぞれ何を想ってどのような行動をしていたのか
その意味について考察してみます。
これ以降は何となくネタバレ風味なので、未プレイの方は注意してください。
六条宮穂の場合
宮の場合はなんと言ってもシンボルとなってくるのは「階段」でしょう。
グランドフィナーレだけでなく他のルートでもよく階段がでてきますが、
宮にとって「階段」とはどんな意味があったのかと考えてみます。
218段というとても長い階段は宮にとってはこのつぐみ寮が初めて。
もっと極端に自分の足でもってどこかへ向かうこと自体が初めてだったのかもしれません。
いくら自分がお嬢様であっても、このつぐみ寮への階段は自分の足で上らなくてはならない。
つぐみ寮は自分のお嬢様という立場も関係なく自然に接してくれる場所、
そんな居心地のいい場所を目指すのならば、218段の階段もいとわない。
そうした自由への道といったシンボルとして階段が最後に描かれたのだと思います。
そう考えると、何となく「宮の成長」という点でもつぐみ寮がすごくよかった場所だと思えます。
沢城凛奈の場合
スポーツが好きな凛奈らしく、最後もバスケのフリースローをする様子が描かれています。
そしてそのフリースロー一本一本に意味を込めて大切に投げているあたりが
凛奈の本当の素直さといったものを感じることができる気がします。
絶望と逃避から救ってくれた、そして一緒にいてくれて幸せを感じてこれた
主人公をはじめとするつぐみ寮の仲間たちには
感謝してもしきれないくらいの恩を感じていたのでしょう。
その「ありがとう」をせめて自分にとって形として残すためにもゴールをねらい、
そしてフリースローが続く中で「ありがとう」の数が数え切れないくらいたくさんあり。
そんな様子から凛奈は改めてつぐみ寮のかけがえのなさを感じていたのだと思います。
羽山海己の場合
畑への水やりをする様子が描かれていますが、
これは何気ない日常のシンボルを日課の水やりを通して表しているのだと思います。
つぐみ寮で「みんな」で過ごすことに
誰よりも大きな価値を見いだしていた海己にとって
これまで築き上げてきたつぐみ寮という空間はとても大切なものだったと思います。
そうした空間の中で、期せずして料理を任された海己にとっては
自分の育てた食べ物を「みんな」の象徴とも言える食卓を囲んでの食事として
団らんの中に居場所を持つことは、何よりの楽しみだったのかもしれません。
そうした意味もあり、居場所を提供してくれた食べ物たちへと
感謝を込めて最後の最後まで欠かさずに水やりをしているとも考えられると思えます。
桐島沙衣里の場合
一人でビールを飲むことをためらっている様子が描かれていましたが
つぐみ寮ではお酒を飲むときには一緒に飲んだり愚痴を聞いたりしてくれる、
隣にいてくれる存在が当たり前のようにあったのだと思います。
そういう点ではいい意味で一人になれる場所がなかった、
気分が沈むことなく励まし励まされて日々を過ごすことができた、
誰かと一緒にいる安心感から心地よく酔うことができたのだと思います。
そうした居心地の良さを感じることのできるつぐみ寮の中では
最後まで気持ちよく酔える空間であってほしいと願ったためか、
一人で飲み一人で酔うことをためらっていたのではないかと思います。
浅倉奈緒子の場合
屋上で島全体の景色を眺めながら、穏やかな表情をしていましたが
その中で自分自身の変化を優しく受け止めていたのだと思います。
島でのつまらない日常を社交的な態度もとい仮面で過ごしていた昔、
自分の視線は遠い空を見ていたけれど
今はつぐみ寮のため仲間のために全力を尽くすことのできる自分がいる。
そして自然と視線もそうした仲間たちへと向けることができるようになった。
そうした島での変化を何より会長自身が温かく認められたからこそ、
島でのつぐみ寮での生活に感謝するとともに、
とてもさわやかで穏やかな表情でいることができたのだと思います。
藤村静の場合
主人公からピアノを教わる中で
つぐみ寮で取り戻していった自分らしさ、
そしてつぐみ寮のみんなかが静のために与えてくれた思いやりの心地よさを
改めて感じていたのだと思います。
そしてその優しさにもっと身をゆだねていたい、
もっと感じていたいと願うも果たされないさみしさを感じるとともに
その優しさを吸収し、自分もそんな優しさを与えることのできる人になりたいと願う
そんな心境をピアノレッスンをシンボルとして表していたのではないかと思います。
また静自身としてもつぐみ寮からの巣立ちとして
最後に泣き顔であれどはっきり言い切れた「はいっ!」に表れていると思います。
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それぞれのシナリオについて以上のように考えることができるのではないかと思います。
や、かなり強引な部分もありますが、それでも美化された物語として解釈すると
ここまで別れをきれいに演出できたシナリオもすばらしいと思います。
そして六人全員分のシナリオについて考察してみると、
何となく共通点が見えてくるような気がします。
それぞれが今更ながらに気づくかけがえのない想いと別れの実感。
それでも今までの大切な日々を「約束の日」まで続けることができたことで
そうした想いをじっくりとかみしめる余裕があったのだと思います。
「約束された別れ」を「約束された日」に「約束された歌」でもって迎えられること
それは自分たちの努力の結晶であり、とても大切な絆そのもの。
そうした達成感のようなものが、納得できる悲しさとして、
うれしさとともに感じさせてくれるのだと思います。
普段何気なく過ごすかけがえのない日々の価値を
限られた時間の中として有限であることによってあえて強調させることで
今までありふれていた「末永くお知らせに」的なエンディングでは
表せなかったことのできなかったことをうまく表していると思います。
終わりがたとえ悲しいものだったとしても
そこに大切な意味を見いだして納得できる悲しみを謳歌することができる。
「別れの悲しさ」をテーマに持ってきた、新しい視点にして感動できるシナリオでした。
約束されていた別れを最高の形で迎えられた、とても感動的なシナリオだったと思います。
2006-06-01 (Thu) | COMMENT (2)
COMMENT
移転お疲れ様です^^
まだまだ頑張らなきゃないようで…
頑張ってくださいね♪
ところで、私も「この青空に約束を―」始めました!
って言ってもOPくらいまでしかやってませんが^^;
OPムービーいいなぁって思ってiPodに入れましたw
1日1回鑑賞は欠かさないです。
このレビュー、ネタバレ気味なようで。
なのでまだ読みません。
すべてが終わったときに共感できたらいいなぁって思ってます。
では、細々と進めていきます。では^^ノ
2006-06-01 (Thu) | Maple
> Mapleさん
こんにゃくは個々のシナリオ以上にグランドフィナーレもオススメですよ。
ぜひぜひ楽しんでプレイしてください。
ちなみに、個人的にお気に入りのキャラは凛奈だったり。
ちなみに、自分はiPod持ってないです…(涙。
某メーカーのMP3プレーヤー使ってます。
256MBが少ないと感じてきた今日この頃。
そういえばこんにゃくのOPソングが
どこかのカラオケの楽曲に入るとか何とか。
2006-06-02 (Fri) | 朝凪優