FORTUNE ARTERIAL Vol.09 母の愛情と娘のわがまま
さて今回は 「FORTUNE ARTERIAL」 をプレイして感じた
トゥルーシナリオでのちょっとした違和感について
母の愛情と娘のわがままという視点からまとめてみようかと思います。
トゥルーシナリオは瑛里華トゥルールートといった位置づけで
瑛里華が吸血鬼の宿命から解放されるシナリオだったわけですが
個人的には果たしてこれでよかったのかなぁと感じる部分もありました。
伽耶にとってのトゥルーシナリオ
このシナリオを考える上で欠かせないのは伽耶の存在ですが
伽耶にとってトゥルーシナリオはなかなかに複雑なものだったと思います。
個人的にはどうも伽耶が一方的に責められていたように感じました。
主人公たちが瑛里華にとっても伽耶にとっても双方の解決になるような道を
模索したいと言っていましたが、結果的には必ずしもそう感じられなかったわけで。
確かに伽耶のしてきたことはゆがんだものだったかもしれませんが
その一方で子供への愛情が皆無だったというわけではないような気がします。
子供の安全を願って狩り場となる閉鎖的な学院を設立したり
人間社会に毒されないように安全な屋敷へとかくまったりといった様子は
結局は瑛里華を苦しめていたという皮肉は結果ではあったものの
伽耶にとっては愛情を注いだという自覚は少なからずあったように思います。
そうした想いは子供には全くと言っていいほど伝わらず
伽耶の生きてきた250年を否定するかのように責められてしまう様子に
解決を目指しながらも心を痛める複雑な心境があったように思います。
一定の解決を見ながらも達成感がわいてこないと主人公に言わしめた一因は
一方的に責めてしまった複雑な心境にあるような気がするわけです。
とは言えトゥルーシナリオは伽耶にとって始まりのシナリオ。
250年という長い年月を停滞したまま過ごしてきた中で
伽耶と稀人、伽耶と瑛里華の誤解が解けてこれからどう生きていくのか、
そんな未来を模索しようとするシナリオだったのだと思います。
結果的に伽耶にとっては真の解決を見たと言っていいように思います。
もっともその過程で伽耶が一方的に責められていたという点に関しては
やや複雑な心境にもなるような気がしますが…。
何はともあれ結果的に伽耶を責める形にはなってしまったものの
伽耶にとってはこれからを歩もうとする晴れやかなフィナーレになったと思います。
旅を続ける中で気持ちの整理がつけば
今度こそ本当に母親らしいことを瑛里華にしてやれるのではないかと
そんな伽耶の未来を期待させるような結末でした。
瑛里華にとってのトゥルーシナリオ
さてそんな一方で瑛里華について考えてみると
トゥルーシナリオに違和感をもった要因があるような気がします。
瑛里華を自由にするために母親の呪縛から解放するといった目的で行動していた中で
その解決を見ただけでなく同時に吸血鬼の呪縛からも解放されたわけで。
結果として瑛里華は吸血鬼という宿命から解放されたために
同時に血を欲する、眷属を欲するといった衝動からも解放されたわけですが
もし瑛里華が吸血鬼として行き続けるという道を選んでいたとしたら
根本的には何も解決されていなかったのではないかと感じる部分がありました。
個人的には吸血鬼から普通の人間へと戻ったということは
吸血鬼の宿命から逃避したに過ぎないのではないかとも感じてしまいました。
瑛里華は眷属を持つことはおろか血を吸うこともかたくなに拒んでいたわけですが
吸血鬼として生まれ吸血鬼として生き続けなくてはならなかった以上
そうした宿命を拒み続けることはわがままに過ぎなかったのではないかと思います。
稀人の教えを伽耶が誤解し、さらにその伽耶の教えを瑛里華が誤解し、
吸血鬼の覚悟といったような教育がそもそも欠如していたような気がします。
そうした誤解が解けた伽耶と瑛里華にとっては
必ずしも瑛里華を人間へと戻すことが伽耶の贖罪になるわけでもなく
共に吸血鬼の親子として生き続けるという選択肢もあったように思います。
まあそこに主人公がどう関わってくるのか、
感情は生もの故に未来永劫の結論ではないなどの面もありますが
少なくとも吸血鬼としての宿命から逃避するよりはすっきりしたのではないかと思います。
結局のところうがった見方をしてしまえば
主人公の血が瑛里華を壊す、その血がなくてもやはり瑛里華を壊す、
そんな八方ふさがりの運命にあらがえず解決できずに
吸血鬼としての宿命を放棄したとも見て取れてしまうような気がするわけで。
そういう点では吸血鬼として親しい人から血を吸うことを
結婚と位置づけて契約を交わした瑛里華ノーマルエンドはなかなかよかったかと。
吸血鬼としての覚悟も盛り込んだシナリオになっていたように思います。
もっともその契約が眷属化させてしまった後というのが悲劇なのですが…。
まあ吸血鬼というテーマを別にして考えてみれば
瑛里華にとっては幸せな未来を予感させる結末だったわけで
フィナーレとしてはきれいにまとまっていてよかったと思います。
ただグランドフィナーレと呼ぶにはやや収束し切れていなかったかなとも思いました。
更新後記
まとめページにてほかのレビューも公開しています。
» [ FORTUNE ARTERIAL まとめページ ]
2008-02-26 (Tue) | COMMENT (0)